先日北海道はニセコの隣町ルスツリゾートと羊蹄山を中心としたエリアを舞台に開催された国内最大級のアドベンチャーレースniseko expedition22に参戦しました。

山岳スポーツの総合格闘技と謳われるこのアドベンチャーレースという競技は山岳地や離島などがフィールドとなり必須の3つのセクション、トレッキングセクション(オリエン/トレラン)、バイクセクション(MTB)、パドリングセクション(ラフト/パックラフト/SAPなど)を含み、他にも懸垂下降やクライミング、スイム、沢登りなども織り交ぜながら広大なフィールド上に散りばめられたチェックポイントをレギュレーションに従い地図とコンパスだけを便りに獲得していき得点とスピードを競います。
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と言う表現が分かり易いかなと思います。

まだまだ知名度も低く競技人口もとにかく少ないこの馴染みの薄い競技の魅力について少しばかり紹介できればと思います。

最近になりこの世界の先駆者である鬼軍曹こと田中正人さんや7年に渡るグレートトラバースの放送などで知名度が上がった田中陽希さんなどが少しずつメディアなどへ露出されるようになったおかげで周りでも聞いたことはある、何かで見たことある…と言った声はたまに聞くようになりました。

実際競技の内容は各大会によっても様々で同じ大会でも年度ごとにコースや構成されるアクティビティは変わり、全く同じ条件下で行われる大会は一つもありません。
9BB110A0-410B-4386-8EF5-EAA01C97A770.jpeg 1.16 MB9BA991D3-2B74-45AE-BBDF-DB697519BD54.jpeg 1.2 MB1日でフィニッシュするものから海外では1週間ほどノンストップで繰り広げられるエクスペディション型レースまで難易度も含めて幅広いバリエーションがありますが基本的なルールとしては

・行程に最低トレッキングセクション、バイクセクション、パドリングセクションの3種を含む

・一チーム4人制、内最低1人は女性を含むこと
    ※レース中1人でも競技続行不可となればチームリタイヤとなります

・歩行困難な怪我や事故でない限り自力でリタイヤ/下山等できる体力を要すること

・フィールド上のチェックポイントへはコンパスと配布の地図のみ使用。位置情報など測れる電子機器等の利用禁止、レース中に通信手段を用いた情報取得禁止。

と言った所でしょうか

装備・必携品などの事前ブリーフィングはありますが、どの大会においてもアドベンチャーレースのコース内容は開始直前まで全く知ることができません。
川を降るのか、どれだけの高度の山を登るのか、MTBも担いで進まないといけないのか、藪を漕ぎながらナイトオリエンテーリングがあるのか…などなど総距離も含めて直前にしか知り得ません。

これもアドベンチャーレースの醍醐味の一つでもあります。

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全チーム一斉スタート直前にコースマップが公開されわずか10分〜30分ほどの間にコースの全体像を把握し戦略を立てていくんですが、まずはこのスタート前の戦略会議が長いレースの結果を大きく左右すると言っても過言ではありません。

限られた時間の中で読図に全集中して可能な限り地図から得られる情報とレギュレーションをスタート前に頭に叩き込んでまいきます。

レース前のコース環境の予想やスタート前の情報整理など、これらはやはり実践経験が豊富なほど断然有利となります。

スタートしてからは地図とコンパスを片手に森の中へおよそ宝探しのような旅が始まります。

チーム内でもバックグラウンドが違い得意分野も苦手分野も様々だったり特性が違ったりするので、私はさながらリアルなドラクエの世界に旅立つような感覚になります。

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92FFA205-B346-44D7-87EA-1AFEAC75D368.jpeg 1.04 MBさらに私なりにこの過酷さの色が濃いアドベンチャーレースの魅力をまとめてみました。

●フィールドの全く異なるスポーツアクティビティーが一つの競技の中で楽しめる

●全く同じ環境下でのレースがなく、レース毎に攻略法も変わり新鮮さを楽しめる

●身体能力とともに読図のための知力や目まぐるしく変化する条件下で最適な判断を下す決断力なども求められパワー一辺倒で勝敗が決まらない

●次々に遭遇する困難をチームの結束と協力で乗り越えていく快感とゴールした時に味わえる共感

●レース中に訪れる様々な予期せぬ困難やトラブルを乗り越えゴールにたどり着くため他の競技では味わえない達成感と共に自己成長を感じられる

●各チームによって得意不得意分野などが様々、事前準備/装備のミス、競技者の負傷やレース中野体調不良、レギュレーション違反、睡眠、遭難、、などなど、他の競技に比べ順位変動の要素が多く逆転劇も多く発生する

●チームコンディションや身体的ポテンシャルなどによって、ルート選定、ポイントの積み上げ方、捨てるチェックポイントの選択、アタックの時間配分、体力温存箇所の選定、休憩のタイミング、他チームへのミスリードや油断を誘う猿芝居、ボートを一旦畳むかそのまま持って移動するか、、など常にあらゆる判断に迫られながらその時点・環境下でベストな決断を下して進む高度な戦略性

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と言ったところでしょうか。
やはり競技時間が長いという事と、私たちのコントロールが及ばないワイルドな自然環境や天気の中で行われる条件の為、レース中は予測できない様々なことが起こります。
 
レース前にも体調管理だけでなく様々なレースコンディションを想定し対策を練り装備の選定やパドリングなどのスキルアップやレスキュースキル習得、誰がどれだけの荷物を負担するかなど、スタート前からもすでにレースが始まっており、この事前準備を怠ったりミスをしてしまうとまずレースを制することは困難となります。それほど事前準備が大きなファクターであり勝敗を大きく左右します。
 
例えば軽量化を優先し着替えや防寒対策ウェア装備類を手薄にしたところ、夜に山中で天候が急変し雨が降ったり急激な気温低下に見舞われると体温管理ができず低体温症に陥り即リタイヤとなってしまいます。落水のケースなども同様です。

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携行する食物、水分量、エナジー補給食なども絶対に切らすことができないアイテムですが、どこでどれだけ補給できるかなども読みギリギリまで削って体力負荷を低減させるか、リスク追ってでも安全策を講じるか。特に水分補給に失敗すると即致命傷となり、さらには山中では命取りにもなりかねません。
 
その他にも怪我や危険生物への応急処置対策、パンクや故障時のリカバリー対策など様々なシーンを想定しての事前準備が必要になります。ロングレースともなればスポーツしながら同時にサバイバルの様相にもなります。という事もあり「当たって砕けろ!」タイプにはちょっと向かない競技かもしれません。
 
スポーツしながらサバイバルて、、

ここまで聞くとやはりかなりの物好きでないと飛び込まない競技の世界なのでは?と思われるかもしれません。

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自分のことも含めてある意味正しいかもしれません、どういうこと!?と目の前に現れる理解不可能な課題にも笑顔とノリで飛び掛かっていく多少変態的なメンタルスキルも必要な気がします(個人の見解)
 
ただ、一つの競技でこれだけ複合的な要素が重なり合い、事前準備から幅広い知識やスキルを求められるこのスポーツの奥深さこそアドベンチャーレースの最大の魅力だとも感じます。
 
極めるためには多面的なアプローチが必要になり、得意分野を伸ばしながらも決定的な弱点を作らないバランスの良いスキルアップが求められます。
 
道のりの長さを感じることもありますが、伸びしろの余地がたっぷり用意されているので一つ一つのスキルアップを実感すると次のセクションのあのスキルも!と次々欲が出てモチベーションが上がります。

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この事前準備の精度やチームワークが勝敗の鍵を握り、蓋を開けてみないと何が起こるか分からない特性のアドベンチャーレースは、最近では企業研修や学生のリーダーシップ研修などに取り入れられるケースも増えてきているようで、裾野が広がるきっかけになるのではと期待しています。
 
では、研修に取り入れることで何が期待されるのか?私がすぐ思いつくもので
    ・チームワーク力
    ・リーダーシップ力
    ・判断/決断力
    ・危機回避/危機管理能力
    ・事前想定力
    ・計画力
    ・臨機応変力
    ・分析力
    ・自己管理能力
などなど。他にもあるかと思いますが主な所でもこれだけあります、もちろん体力もですが。
これらを訓練ではなく自然の中でポイントを獲得しながら競うアクティビティーの中で鍛えられるのだからリターンが多くコスパのいい研修になるのではないでしょうか。

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一通りアドベンチャーレースとはどんなものか?について紹介してきましたが少しでも興味を持って頂ける方がいれば幸いです。
 
まだまだこの競技について、また魅力についても詳しく説明されているコンテンツは少なく、新しい世界に飛び込んでみようとするチェレンジャー達への一助となればと思い記事として公開してみようと思い立ちました。

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私自身まだまだ新参者ではありますが、この立ち位置だからこそすでに参入されている競技者、これから参入してみたいと興味を持っているチャレンジャーどちら側の心境・視点を持ち合わせ橋渡し役が担えるのではと思い、初心者向けのレースや体験イベントなどに参加し興味を持った人たちにチームアテンドやレースへの出場に向けてのサポートなど手掛け始めています。
 
私が味わったあの長旅の末にゴールにたどり着いた時の感動と達成感を、一人でも多くのチャレンジャーに味わえるきっかけのお手伝いができるかと思うとワクワクが止まりません。
 
少しでも興味を持った方がいれば、まずはトレランから始めてみてください。

#Photo by KENTA ONOGUCHI

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