昨年に続き今年も国内最高峰のアドベンチャーレースNISEKO EXPEDITION 23 に参戦してきました
心身ともに限界へと挑むアドベンチャーレースだからこそ日常では味わうことのない貴重な体験があり、またそんな過酷な環境や極限の状態だからこそ得られる境地と収穫もあります
先日のレースで昨年とは全く違う体験と収獲があったのでレポートしようと思いました
今年から海外チームの参戦も含む世界シリーズの一部として昇格したこともあってか今大会は昨年に比べ異次元のスケールアップとなり過酷さも危険度も格段に上がったため、その大きく立ちはだかる北の大自然の前で終始己の限界と、むき出しになる自身の内面の弱さと向き合う過酷なレースとなりました
あまりに厳しいコースセッティングとなったため大会史上初となる完全完走チームまさかの0となる事態に
厳しい寒さに見舞われ遭難必至の深い薮に覆われた稜線越えの難所をほとんどのチームが突破できず、ゴールまで辿り着けたチームは1/3にも満たないという大波乱の23年大会でした
レース直前に立て続けに怪我や身体の不調に見舞われたこともあってフィジカルの準備は全くできず、腰も首も痛みと痺れを伴ったまま当日を迎えることになりましたが多少の痛みや体力の不安はスポ根的に気合いと根性である程度乗り越えられるかなと安易に考えてました
さらにこの一年でアドベンチャーレースに必要な技術的スキルもそれなりに上達し、ギアのスペックも上げたりしたこともあって昨年のようにまずは何とかゴール!ではなくそれなりの納得いく結果も求めてのチャレンジのつもりでした
しかしながら今年のコースはそんな小手先のスキルや気合いや根性なんかでは抗うことのできない意外な要因に行手を阻まれ意識を喪失ながらの無念のリタイヤへと追い込まれてしまいました
体力の限界や睡魔に襲われたわけではなく真夏のレースにもかかわらず冬将軍ならぬ低体温症の難敵の前に撃沈という予想外の結末と
今年のレースは昨年の好天とは違い深夜のスタートから激しい風雨に見舞われ、翌日もまた一度も晴れることなく気温も上がらないまま何度も雨に見舞われ、ダウンリバーの他今年初となった日本海の荒波に打たれながらのコースタリングや雪解けの沢の中のシャワークライミングで何度も冷水を浴び、乾くことなくそのまま雪渓残る1000メートルを超える吹きっさらしの稜線を辿り、数十キロに跨る9つのピークを暗闇と背丈の倍ほどある深い藪の中を掻き分けて進まなければいけないルート
稜線に取り付く登山口にたどり着くにも平均7時間もの時間をかけて鮎の遡上のごとく水量増した沢をひたすら登らなければならず、体力も体温も相当削られた後の深夜からこの果てしない藪漕ぎの稜線越えを設計するというコースディレクター鬼軍曹の思考回路はもう常軌を逸してると呪いました
※17日月のクレイジージャーニーでその狂いっぷりが披露されます!是非ご覧ください!
選手としても狂ってますが
経験豊富で強靭なフィジカルを要する上位チームや海外からのアジアトップクラスのチームでさえあまりの藪の厳しさに遭難の恐怖を感じ、またこの9ピークの稜線を突破するまでに寒さに耐える自信がない、と言うニつの要因で何時間もかけて進んだ道のりを引き返し撤退してきたので私達のチームもこれらの情報踏まえ判断すべきと下山する決断を下しました
複数チームまとめて下山中にもすでに呂律が回らなくなり低体温症に陥る人も発生しチームの垣根を超えて急いで湯を沸かし対処に追われることになったんですが、その後下山してから自分も低体温症に見舞われるまさかの事態となってしまうとは…
下山し海辺のトランジットまで辿り着いた所で主催者の指示を受けレース続行についての幾つかの選択肢を提示されチームで検討に入ります
その間に海から吹き付ける冷たい風にジワリと濡れていた身体がどんどん冷やされてしまい気付くと身体に力が入り過ぎて身動き取れない状態で、頭の中もすでにこの寒さと恐怖に耐え忍ぶことしか意識が回らなくなっており、何とか急いでエマージェンシーシートで身体を覆ってもらい再スタート試みるもすぐに始まるトンネルを通過する際には数歩進んでは意識が飛びハッとするを繰り返すほどの所まで悪化してしまいました
3キロにも及ぶトンネルを抜けるまでにこれを繰り返しているといつか意識が飛んだ際、道路側に倒れると深夜のトンネルをぶっ飛ばしながら通過する車に跳ねられ即死するなと薄れる意識の中でも何となくイメージできたので進むのを諦め固まって立ち竦んでいた所をチームメンバーに保護されそのままトランジットまで引き返し、この状態でトンネルを通過できそうもないので無念のリタイヤを選択することとなりました
結局、力を出し切ることなく不完全燃焼で終えることとなり悔しさが残る今年のレースとなってしまいましたが、振り返ってみると低体温症に見舞われリタイヤへと追い込まれるまでに予想外の悪条件が重なる中でも未然に防ぐことができる様々な対処や回避方法があり冷静にさえいれば容易に気づけたのだと後悔の念が募ります
さらにはレース中にも幾度となく訪れていた重要なポイントで判断を誤り、選択を間違えリタイヤへと繋がる伏線を自らどんどん手繰り寄せていたのだと思います
これから迎える最大の難所への突破を焦り、日没とともに気温が下がり雨も風も強くなる中、すでに沢で冷えた身体の防寒ケアや準備を後回しにして先を急いでしまったことが数々の判断ミスを犯すことになったのだと思います
険しい自然を舞台に様々なアクティビティスキルを駆使し体力の限りを尽くしながらチームでゴールを目指すアドベンチャーレースですが、次々と訪れる厳しい状況下でいかに冷静に思考を働かせ適切な判断・行動を取れるか、フィジカルだけではなくメンタルスキルも併せて重要な競技だと今回のレースで痛感させられました
日常に置き換えてみてもレースのような厳しい状況に見舞われることは稀かと思いますが、私達の長い人生においても同様に様々なシーンで重要な選択肢が訪れると思います
一端の社会人として歩むようになってからもなかなか一度も後悔のない道のりは難しいのではないでしょうか
仕事で抱えるトラブルや人との関わりの中で目の前に訪れる課題を乗り越えていき、より良い方向へと歩みを進めるには培った知見を活かし想像を働かせ自身にとってベストな判断を下していく必要があります
そんな状況に見舞われる時こそ余裕がなく切羽詰まった状態であったりし適切な判断を下しにくい状況下に置かれたりします
ハードなレースで得た最大の教訓はやはりあらゆる状況下でも自分を見失わないメンタルの強さとそれを支えるためのしっかりした準備
フィジカルの強化やスポーツのスキル向上は目に見えることも多く上達の手応えも分かりやすく感じやすい、だから取り組みやすくもあり楽しく思えます
メンタル強化となると目に見える変化を捉えることが難しく、主観による手応えに頼り客観的な計測も容易ではないため鍛え方がフィジカルより取り組みにくいように思います
なので鍛え方も人それぞれに正解を見つけにくいと感じます
滝に打たれる?
苦行してみる?
瞑想してみる?
悟りを開く?
コーチングを受ける?
◯◯の母に診てもらう?
チャクラを開く?
ラボの皆さまは厳しい状況下で自分を見失わず、最悪の結果を招かない適切な判断・決断を下せるようにするならどの様な対策を試みるでしょうか?またどの様な準備に取り組もうと思いますか?現在進行中の方もおられるかと思います
私は今回のアドベンチャーレースという競技の中でこの様な極限の状況に身を置くことで纏っていた鎧を剥がれ曝け出された内なる自分と向き合い心の弱さや未熟さを突きつけられたおかげで自身に足りないもの、もっと必要なもの、言い換えると本当に必要な鎧とは何か…を知る貴重な機会を得ることができました
知ることで対策を練ることができ、これから何をすべきか遠い次の道標が一つ見えたように思えました
こんな酔狂なレースをご一緒して頂くのはなかなか難しいかと思いますので、皆さまも一度突然訪れるかもしれない厳しい状況下で大きな困難にぶち当たった時に自分はどれぐらい冷静で適切な判断力を発揮できるか試してみるのはいかがでしょうか?
自分の強みを知ることももちろん大切でフォーカスされやすいと思いますが、同様に危機管理や致命傷を負わないためにも自分の弱さを知ることもとても大切なのだと思いました
7月17日放送のクレイジージャーニーで放送されるアドベンチャーレースの過酷な状況下で織りなす狂った人間模様をお楽しみください🎵
見逃した方はTVerで
先日出場したニセコレースの優勝者が出場権を獲得する世界最高峰のアドベンチャーレースの模様が紹介されます
#Photo by KENTA ONOGUCHI
@雑談