第四弾は、現在沖縄県の古宇利島でマンゴー農家としてチャレンジされている魚野正貴(@ジャスティン )さんにお話をお伺いしました。

Web業界でフリーランスとして働きながら、マンゴー農家に転身されたジャスティンさん。沖縄での移住生活、移住したことでもたらされた心境の変化とは?




マンゴー農家    魚野正貴さん

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フリーランスでWebマーケティングのディレクターの仕事をしながら、これまで海外60ヶ国以上、180都市を周遊。2017年〜2020年は年の2/3を海外のホテルやアパートメントで転々とする生活をする。2020年3月、海外諸国のロックダウンをうけて帰国。帰国後は、日本の各都市を巡るライフスタイルを続けながら、現在は沖縄県古宇利島でマンゴー農家として自然栽培にチャレンジしている。


 海外ノマド生活から一転、沖縄でマンゴー農家に

ーラボメンバーの中にはジャスティンさんのことを詳しくご存知ない方もいらっしゃると思いますので、今取り組まれていること、今のライフスタイルについて教えてください。

    今の職業はマンゴー農家です。沖縄県の古宇利島(こうりじま)という本島の北部に移住して、ちょうど1年経ったぐらいです。農家をして、海に入って、酒飲んでっていう毎日を過ごしています。なので仕事として話せることはあまりなくて、30歳までは『永遠の旅行者』という小説を読んで、パーマネントトラベラーという生き方に憧れたことをきっかけに「旅人」といいながら、どこにも定住しない生き方を4年間ほど実践していました。コロナを期に日本に帰国し、現在は農家の方に誘われてマンゴー農家に転身しました。

ー古宇利島に移住されたキッカケは、マンゴー作りだったのでしょうか。
   
   
元々は、グランピングの施設を作るというプロジェクトの話を受けて移住しました。23歳の時、マレーシアに移住していた時期があったのですが、そのときに仕事で出会ったオーナーが古宇利島のカフェとコテージを買収して、それをグランピングに作り替えてリノベーションするというプロジェクトをやろうとしていて、声がかかりました。

    

    グランピングもよく分かっていなかったのですが、ちょうどその時ナオさんたちの影響もあり、サウナにはまっていた時期でした。グランピング施設にもサウナを作ると聞いたので、何も分からないまま「じゃ行きます」といって移住しました。古宇利島に行ったことがなかったこと、時間があったこと、グランピングの設計だったり、デザイン、施設店舗、商業建築辺りの立ち上げを学べる、横で見れるかなというのが全て重なったタイミングでした。

  インスピレーションにしたがって、始めた新しい挑戦

ーマンゴーを栽培しよう、マンゴー農家をしようと思ったきっかけがあれば
    教えてください。


    僕はあまり目標を立てない生き方をずっとやってる方なんです。昔はゴリゴリに目標設定するのが格好いいと思っていたんですけど、やりたいことはコロコロ変わるし、何かの本で、昨日の自分が立てた目標は昨日の自分、細胞レベルで人間というのは毎日変わっているから、今日立てた目標、やりたいことは昨日の自分とは違うといったことを誰かが言ってるの聞いて、確かにと思ったんです。その時のインスピレーションを大事にしているので、わりと自分がこういうふうに生きていく中で出会った人とか、話が来た時に、自分がやりたいと思ったり、その時に自分の時間があったり、その時の引き合い、自分の状態でやれる状況だったらやっちゃうという性格です。

    マンゴーもちょうど沖縄に移住してきて、かなりアテンド三昧の日々を2、3週間やったあとに、それがなくなったら、マンゴー農家がポンと来て、農薬とかを使わない自然栽培のやり方でマンゴーを作っている農家さんが来て、やってみる?と声をかけて貰って、ノリで始めたというのがあります。


ー農作業のオフシーズンはあるのでしょうか。あと1日の作業時間を教えてください。
   
    大体作業する日は、1日に4時間から5時間作業をしています。朝6時ぐらいに起きて、30分ほど車を飛ばして、農地がある場所で大体4時間ほどやっています。それを週4から5日やっています。オフシーズンに関しては、沖縄だとマンゴーは夏の大体6-7月が出荷なので、なので今の辺りは、わりと忙しくなるのですが、ちょうど収穫し終わったあとの9ー10月は、特にそこまでガツガツ作業をやる必要はないかなという感じなので、秋冬がオフシーズンになると思います。

ーマンゴーの方は順調に育っていますか。

    今年はハズレ年だったみたいで、結構頑張ってやっていたんですが、例年の3割ほどしか採れない状況でした。沖縄が過去最大雨量ぐらいの年だったことも影響しているようです。現地の方もこんなに雨降る沖縄は生まれて初めてだっていっていたので、やはり農業は天候の影響もすごく密接に関わっていて、そういった意味で仕方がない年だと感じています。ただ収穫できたものについては感動しました。1年育てて、ようやく今実がなってきて、いよいよ出荷前。あと1ヶ月ぐらいで出荷かなという時期です。

*2022年6月末時点:現在は出荷に向けて動かれているとのこと
 

ー今後考えられている構想や展望について教えてください。
 
   
今後の展望自体は、あまり決めていないです。ただ地方創生に関しては、すごく興味を持ち始めています。僕は、同じ場所に住むというのが、マレーシア以来なので今回のようにひとつの拠点に住むのは5、6年ぶりになります。3か月以内で場所を転々としていた人生から、沖縄に定住して、住民票を入れて、初めて確定申告を30歳超えてして、農業をやるから、その土地を離れられない。2日に1回は農園に行く、何かを世話すること、沖縄でのコミュニティ、隣人との付き合い、マンゴー農園の場所の区長さんへの挨拶回りとか、酒を酌み交わすとか、そういう生活を通して地方創生に関しては、すごく興味がでてきていて、そういったことに携われていけたらいいなと思っています。

ー沖縄の地方創生への想いを持ち始められたということなのですが、今後沖縄にこだわらず、おもしろい話があるところに行きたいという想いもありますか。

   
そうですね。ただ、家庭というのも含めて、軸を持つことも大事だなと思い始めた30代です。今までの人生では、全部ゼロイチだったと感じています。人間関係もそうですが、積み重ねて深くなっていくものだと思うんです。ただ、自分はそういったことを常にやってこなかった。何かをしたらまた手放してというのを繰り返していたので、今マンゴーをやるという地道な作業を1年間自分で頑張ってやってきています。
    もちろん、何かをして手放しての繰り返しだとしても、それがどこかでつながることがあったり、振り子のように違うようなことをするのも1つあると思うんですが、こういった一次産業に携わることを継続してやっていこうとは思っています。

    例えば宮崎の「太陽のタマゴ」は、以前東国原さんが宣伝していたおかげで、おそらくほとんどの日本国民が「マンゴー=宮崎」と思っていると思います。ただ、マンゴーは、元々沖縄なんです。今もマンゴーの生産量の半分以上は実は沖縄です。沖縄特有の仕事がめんどくさいという人も多く、高く売る方法を知らなかったり、あまり営業にも興味がなかったりするので、どんどん売値が下がっているのが現状です。
   
    沖縄ブランドの何か企画を作ろうという話や、テーマパークを沖縄北部で作るというプロジェクトもあるので、自分なりに沖縄を盛り上げる行為を、一次産業を通して行ったり、Web3やメタバース関連とも掛け合わせて何かできないか情報収集をしながら農業をしているのが最近です。

ー農業と同時にそれ以外のことも、いろいろ取り組まれているのでしょうか。
   
     これを軸にというのはないのですが、マンゴー以外にも収入はあります。元々サイトを立ち上げたり、Webマーケティングの仕事をしていました。Webを通じて広告収入もありますし、SaaS系だったりサブスク系のプロジェクトに携わる中で、その継続課金があったりと複数の収入源がある程度担保された状態です。なので、今のように移住して農業を8割やっていても生活費は何とかなっているので、その状態から好きなことをしてるというかたちです。

東京の方が安く住める?コミュニティは?移住のリアルな話

ー生活費は、どのくらいかかっているのでしょうか。   

    今住んでいる場所は固定費がかかってないので、家賃はないかたちです。土地が500平米ほどあって、ロッジがそこに3つあるんですけど、管理棟、カフェ棟、本棟があって、そこの管理、業者対応等をさせてもらって住んでいます。
   沖縄の場合は物価が高めなので、地方にしては家賃は高いと思います。むしろ東京の方が安く住めるかなという感覚があります。生活費は僕の場合10万もいかないですが普通に暮らすには15万以下ぐらいかなという感覚です。
ここから車で20分行かないとコンビニもご飯屋さんもないので、食事も全て自炊です。
 


ー今まで定住しない生活をずっとしてきた中で、定住するようになって変わったことはありますか。

    何かを積み上げる楽しさを、やっぱり感じるようになりました。あと、ここは大自然なので、やはり自然っていいなと思えたこともあります。何より周りがあったかい人が多くて、そういうのをすごく大事にしようと思います。人間関係をすごく重んじるというか、深く関わっていきたいというふうに思うようになりました。今までの転々とした生活をしている時に比べると、地元のコミュニティのような繋がりが強くなっています。
   
    価値観を広げるという意味では、いろんな場所、いろんな国、ご飯だったり、そういったものに触れることで許容がすごく広がると思いますただ、自分自身がそれを行う中で、バランス的に縦に掘るものが全くなかったので、横に広げるだけ広げて広く浅くの人間になってしまう不安もありました。だから30歳を超えたら、どこかで一度定住をしなきゃなとは思っていました。たまたま沖縄の古宇利島という場所にいて、農業というところに落ち着いたというか、今はいるので、その1つの縦に掘ったところを更に深掘りしながら進んでいきたいと思っています。

ー今まで転々と生きている時は、周りの人とのコミュニケーションや繋がりをどのように築かれていたのでしょうか
   
    基本Web上で仕事ができたので、仕事関係はクラウド上、Web上でコミュニケーションを取るかたちでした。国を回る時は、基本的には1人で飲み食べをして、そこまで自分から話しかけたりはしないほうでしたが、そこで若干仲良くなる人もいれば、あそこの店が旨いぞといったことはありました。

    どうしても高速移動というか短期だったので、また行くよっていうことにも、そこまでならないですし、1年後とか2年後とかになるかもしれないので、一期一会は大事にしていましたが深く広くコミュニケーションが取れたわけではなかったという印象です。   
あの時もう少し、今の気持ちで接していたら、繋がりが広がっていったのかもしれないです。でもそういう学びも、今回こうやって定住してみてでてきたというかんじがあります。

ー移住するときに一番難しいのは、地元コミュニティとの付き合いだと思うのですが、難しいと感じることはありますか。
   
    今住んでるローカルの方たちはいい方たちが多いです。ただ、古宇利島はかなり気性が荒くて、鬼ヶ島って沖縄では言われているそうです。先日、区民総会に行ったら、区長と区民が喧嘩し始めていて、派閥がすごい多いのも目の当たりにして、その中で溶け込んでいくのは大変なんだろうなとは感じました。なので、よくアドバイスとして、あまり深く入り過ぎるなとは言われています。笑顔と適度な距離感が大事かなと思います。自分自身は性格上楽しくやっています。

    ただ、コミュニケーションがめんどくさいと思う方はしんどいかもしれないです。いきなり、電気が点いてる家に行って、泡盛を持って飲もう!といった雰囲気があったりします。僕もマンゴーのバイト募集の際、近所の家のインターホンをならして、バイトやりませんか?というかたちだったので、性格上できてるのかもしれないです。
    
    移住に向いているメンタリティも大事だと思います。僕も最初マレーシアに行って住んでましたけど、合わなくて帰る人も多かったです。それこそシンガポールなんかもよく行ってましたけれど、帰る人は多いですね。お金の節税や、お金を残すために移住する人は、基本的に帰って行く人が多いイメージがあります。

自分の価値観を再認識するきっかけになった、古宇利島での生活

ー人との関係性以外で、他にも変化したことがあれば教えてください。

    僕は、大学は出ているんですが学歴があまりないというのが自分ではコンプレックスだったりします。すごくそこに未練があって、そこがかなりコンプレックスだから、わりとしっかりとした事業を立り上げたい、社会性があることしたいと思っていたのが、Honda Labに.入る前、30歳手前でした。それがあったので、そういったプロジェクトに入りながら伴走して、事業の売却を一緒にやっていくというスタートアップ的なことを2、3個今もやっています。けれど、結局見栄えだったというふうに今は感じています。
自分の価値観はやっぱり「自由」。自分が楽しいことをひたすらやり続けていて楽しければそれでいいんじゃない、別にそんな大した事業を作る必要もないだろうというふうに今は思っています。

    結果的に地方創生的なことをして、盛り上がって、すごい話題になって、ちょっと社会的にいいことができたということはあるかもしれませんが、自分自身の承認欲を満たすために事業作ろうとか、上場しようとか、M&Aして売却しましたとか、資金調達しましたみたいなことを言いたがっていた自分がいるなというのは、この古宇利島に来てからの気づきでした。楽しいことしてればそれでいいかなと思うようになった自分の中の心境の変化というのがすごくあります。以前は、人とだいぶ比較していました。


    沖縄はそういうふうに考えると、自由で、海が好きで、自然が好きで、キャンプが好きでといった、仕事なんてっというような、いわゆるヒッピー文化みたいな人がかなり多いイメージがあります。楽しく生きている人が多いです。社会的には、低賃金でかなり貧困問題もある場所なんですが、それでも楽しく生きてる人も多いと感じています。

    また、古宇利島ってかなりパワースポットと言われてて、住めなくて帰る人も多いんです。沖縄自体がユタの文化があって、かみんちゅとか、すごくスピリチュアル的な人が集まる場所で、言い伝えもある場所です。今も自然栽培を農業でやっているんですけど、先生はわりとスピリチュアル寄りです。自分はそういうことを信じてる訳ではないのですが、そういう境地や、見えないものを信じる、肯定するようにはなってきてるかもしれないです。

ー最後に、Honda Lab.で取り組まれたいこと・Lab.の方にお伝えしたいことがあればお願い致します。
   

    仕事も遊びも楽しめる大人になりたいなと思っています。
農家という仕事の手前、あまり動けない一年でしたが、落ち着いたらまた全国を飛んで、メンバーたちに会いに行こうと思います。




今回の「Honda Lab. SPOT LIGHT」でも、ライフスタイルの変化、考え方の変化と、
いろいろなお話を伺うことができました。
ジャスティンさん、貴重なお時間をありがとうございました!

今後もHonda Lab.メンバーへのインタビューを実施していきます。
毎月最終週の週末に更新予定です。どうぞお楽しみに!


interview   @Nao  @Kei
Text by      @みぃ
Support     @Yasuto