第三十弾は、自然派ワイン専門ショップとして全国的に知られる「I.N.U.wines」代表の稲益誠(@マコトン )さんにお話をお伺いしました。
ナチュラルワインとの出会い、その魅力からワインの学び方、そして稲益誠さんが伝えたいワインの世界とは?

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自然派ワインのパイオニアとして、業界を牽引するI.N.U. wines 代表取締役。ボルドー大学醸造学部醸造学科主催のテイティングコース講座を受講、生産地を巡り、ヴァンナチュール(農薬・化学肥料を使用せず、醗酵課程から瓶詰めに至るまで自然に近い状態で製造した自然派ワイン)の九州での第一人者。JSA認定ソムリエ、SSI認定唎酒師、WEST Lodon Level3保有。

日常的にお酒に囲まれる環境から始まったワインへの道

―まず最初にマコトンさんの現在のお仕事内容について教えてください。

    ワインショップを経営しています。福岡のワインショップと先日オープンした飯田橋の
ワインバーの2店舗です。福岡の店舗には立ち飲みスペースもあり、ラボの方にもご利用いただいています。来年の7月にも新しく福岡に1店舗オープン予定です。

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ーお仕事を始めた元々のきっかけはどのようなものだったのでしょうか。

    もともと実家が酒販店を経営していたことが大きいです。その影響で自然とワインに興味を持つようになり、知識を深めるために勉強や投資をしてワインに触れる機会が多くなりました。
そこから実家で働きました。ただ、残念ながら実家は倒産してしまったんです。それ以降は、3か所の酒販店で働き経験を積みました。どれも業務用酒販店といってビールから日本酒、焼酎、ウイスキー、ワインまであらゆるお酒を扱うところでした。そこで、いろんな種類のお酒に触れながら、知識や経験をさらに深めることができました。生まれた時の環境も含め、自然とお酒に囲まれる環境がありました。その後、2016年に自分でやろうと決心し独立しました。

ー様々なお酒がある中で、特にワインに興味を持った理由はなんだったのでしょうか。

    父の影響です。父は地元の大学でフランス文学を専攻していて、フランス文学を学ぶなかで実際にフランスへ渡り、現地の生活を経験し、フランス人がガブガブワインを飲んでいる姿を見て、自分の酒屋でもワインを取り入れようと考えたと聞いています。その影響で、実家の酒販店もいろんなお酒を販売しながらもワインに力を入れるようになりました。そんな父の姿を見ていたので、自然とワインに興味を持ちました。
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【ご実家の酒販店とマコトンさんのお父様】
―就職のときに酒販店ではなく、ワインショップに勤めようとは思わなかったのでしょうか。

    実家の影響もあり、酒屋といえば酒販店のイメージでした。ワインの輸入商社で働こうかなと思ったこともあったのですが、東京に行きたくなかったこともあり、あまり積極的に探すことはありませんでした。もともと福岡出身でフランスに3年ほど、神戸にも3年ほど住んでいた経験はありますが、それ以外は基本的に福岡で過ごしています。若い頃に一度、東京に2ヶ月ほど住んだことがありますが、そのときから東京には住めないと感じていました。ワインの輸入商社はほとんど東京にあるので、そこに勤めると東京に住むことが必須になるので、それが嫌だというのが無意識にありました。

―独立されるきっかけは何だったのでしょうか。

    独立を意識し始めたのは約10年ほど前からでした。大手の酒販店に在籍していると所謂企業との取引の関係で、自分が好きではない商品やおいしいと思えない商品を販売せざるを得ない状況に多々見舞われるシーンが多いです。そんなしがらみなどに嫌気がさしていたことや、自分が思い描く方法でワインの魅力を伝えたかったという点もきっかけかもしれません。
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―その中でワイン、中でもなぜナチュラルワインを選ばれたのでしょうか。

    後述にありますように衝撃的な出会いとなった1本をきっかけに、それまでクラシカルなワイン一辺倒だった私はそれから狂ったようにナチュラルなワインにはまっていき、遂にはそのようなワイン以外を飲む機会もかなり少なくなってきました。
またビジネス的に考えても、ナチュラルなワインの生産者たちの生産キャパシティは低く、本数に非常に限りがあるため、販売するワインの獲得をするにも一苦労します。業界に深く長く在籍していたため同業他社よりも優位性を高く取れると考えたからです。

―独立された店舗に飲む場所はあったのでしょうか。

    開店当時はまるでコス〇コさんのような飾り気の無いスチールラックが並ぶ販売スペースが1階部分にあり、新規の方は入りにくい秘密基地みたいな2階部分に曜日限定で立ち飲みスペースを作ってやっていました。もともとは自分たちが試飲するワインの原価を捻出するのが目的でした。
そんな場所に飲むスペースがあったので、お客さまは知人やそのツテで来店される方のみでしたのでまばらでしたが、コロナ期間中にあの悪夢のような禁酒宣言が発令してからは毎日営業していた(酒販店には営業補償のような補助金は一切でませんでした)ので、溢れかえるほど満席の日々が続いてました。

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■I.N.U.wines (以前lab内で公開したURLより登録頂くとlab割の価格になります!)
http://inuwines1010.shop38.makeshop.jp/
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―I.N.U.winesの角打ちスタイルのバーができてから、変化したことはありますか。

     3年前の店舗移転後、韓国のお客様が増えました。韓国の方はインスタの軌跡を追いかける傾向があり、未だにどなたか特定できておりませんが今の店舗になってからワイン系の複数の有名インスタグラマーが立て続けに投稿してくれたお陰で韓国での知名度が爆発的に上がりお客様の来店につながってます。
また店頭に訪れる飲食店さんも増えて、新たなるワインの提案や新規のお取引にも繋がるようになりました。特に県外の飲食店様も増えたと感じています。

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■I.N.U. wines
■I.N.U.winesの本体(Instagram)
https://www.instagram.com/inuwines
■I.N.U.winesのカクウチ(Instagram)
https://www.instagram.com/i.n.u.wines
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―マコトンさんが感じるナチュラルワインの魅力とはどのような点でしょうか。

    飲み心地ではないでしょうか。飲み心地がいいということは、それだけ口当たりが柔らかい、優しい、スムーズという表現ができると思います。飲み疲れしにくい点も良いですね。近年では国内外問わず、素材感をシンプルな調理法で表現される飲食店が増えていますが、そのようなお皿にぴったりフィットしてくれるのもナチュラルワインの魅力だと思っています。

ー印象的なワインはありますか。また、オススメのワインの作り手の方はいらっしゃいますか。

    最初にナチュラルワインの魅力にはまったきっかけは2010年頃に亡くなってしまったマルセル・ラピエールという有名な生産者のワインに出会った事です。
オススメのワインは、シチュエーションや予算など様々な要素があるので、これだ!と断定するのは難しいですね。
例えば、最近INUでカジュアルなクラスのワインの中で高評価なものがオーストリアの生産者であるアンドルファー氏のワインです。オーストリアのお国柄もあるのですが、ワインのスタイルが非常にクリーンで美しい、それでいて旨味もしっかりと感じることのできる味わいで、プロフェッショナルの方たちにもファンが多いワインです。1-2年ほど前までは沢山の量がいつでも購入できましたが、今ではすぐに完売する商品も多く人気のワインです。
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【マルセル・ラピエール のナチュラルワイン】
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■マルセル・ラピエール モルゴン


■アンドルファー マータ・ルージュ 2022

*白も赤もありますが、白は特に人気が高く今は店頭在庫が無い状態です。
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―もともとは、ナチュラルワイン以外も飲まれていたのでしょうか。
 
    ボルドーに住んでいた事もあり、もちろんボルドーワインが多く他にはワインガイドなどで高評価のワインばかりに関心があり、所謂コンベンショナルなワインばかり口にする日々でした。一方でナチュラルなワインに殆ど関心がなく既にそのようなワインが出始めていましたが、美味しいと思うものに出会えてなかったのでしょうね。時が経ち帰国して数年後、最初に出会ったナチュラルワインで一変しました。

本場フランスで磨かれたワインへの情熱と、大橋健一氏との出会い

―ワインを学ぶ中で難しいと思われることはありますか。
 
    たくさんあります。例えばヴィンテージの違いはもちろんですが、ボトル毎の味わいの差です。同じ箱の中のワインを12本飲んでも全く味が違います。(一箱基本12本入)
フランス滞在中に通っていたワインの学校の講義で、「シャトー・レオヴィル・ラス・カーズ」を同じタイミングで複数本(6-7本ぐらいだったと思います)同時に抜栓して、
それぞれをテイスティングする内容でした。
それぞれ全く味が異なっていてワイン自体がそういう飲み物だと感じました。他にもワイナリーに訪問すると樽から直接飲ませてもらえる機会に遭遇するのですが、ここでも瓶詰されたものとの違いが大きく驚かされたりもします。更には時間、ワインの保存状態、グラスの形状、温度や湿度も影響します。食事との食べ合わせや口の中の状態も大きく影響を及ぼします。

―フランスの学校に行かれたのはいつぐらいになるのでしょうか。

1999年頃だと思います。まだフランがユーロに変わってない時代です。ボルドー大学醸造学部が主催するプロフェッショナル向けの約4ヶ月ほどのワイン講座を受講しました。通常こちらのコースは受講が難しく、様々なコネクションを使って受講することができました。ティスティングコースという講座は、約30人程いたと思うのですが、ワインに関係ない職業の方は受講不可でしたので一般人の方はいらっしゃらなく、ワイン流通業の方、ワイナリーの一族が多く、ソムリエの方でさえ少なかったです。
また同時に学生VISAを取得するのが主な目的でしたが、外国人向けのフランス語学校にも長く在籍していました。(1998年~2000年)

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【約10年ほど前に訪れたアルザスのジュリアンメイエでの一コマ】
*帰国後も国内外でワインにまつわる旅は続けているそう*


―ワインの講座は、フランス語だったのでしょうか。語学の準備もされて行かれたのでしょうか。

    フランス語です。その講座を受けたのがフランスに渡って2年目ぐらいだったのですが、受講して完全に理解するほどフランス語はできなかったので、MDレコーダーで全ての授業を録音して、後で聞き直して分からない言葉は調べながら意味を理解して、の繰り返しでした。
    語学の準備に関しては高校生の時から始めました。九州日仏学館というフランス語を学べる機関に通っていました。またNHKのフランス語口座を聞いたり、公文式でフランス語を選択したり、当時の友人たちが大学受験を直前に控え、みんながめちゃくちゃ勉強していた時期でしたので私も受験気分を味わいたくてセンター試験でフランス語を選択し、散々な結果だったのは苦い思い出です。笑    それなりにフランス語を学び意気揚々と渡仏したのですが、今まで学んできたのは何だったんだ?と思えるぐらいフランス語がわからなすぎて、行ってから数か月で日本に帰りたくなっていたのは今だから言える話です。

    現地の学校では積極的に日本人以外の人に話しかけ友達をつくることに専念したり、街のワインショップでスタッフの方につたないフランス語で話しかけたり、仏々辞典を購入したり、生活する中で様々な質問を投げかけてみたり、とにかくフランス語に触れる機会を色々試していた事を思い出します。

―働く中で、影響を受けたもの、こと、人はありますか。

     影響を受けた人は、大橋健一氏(*日本に在住している日本人唯一のマスター・オブ・ワインの資格保有者)です。独立する前に勤めていた職場のコンサルティングをされていたこともあり、そこで出会い一番大きな衝撃を受けました。今、ナチュラルワインに関する日本語の本が多数出版されていますが、大橋氏の最初の著書『自然派ワイン』は当時手探りでナチュルなワインを飲んでいた人たち全てのバイブル的存在になり、著書名である自然派ワインという言葉は、ナチュラルなワインを表現するのにぴったりな素晴らしい造語となりました。その知識の深さとワインの情報の幅広さに圧倒され、雷に打たれたような衝撃を受けました。
    一緒に仕事をしていた訳ではありませんでしたが、毎月東京と名古屋で勉強会がクローズドで開催されていたので必ず参加していました。また国内のワイナリー視察はもちろんのこと、海外も年に1回はテーマ性が設けられたワイン産地とワイナリーを巡るツアーが開催されていたのでそちらにも欠かさず同行していました。
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■自然派ワイン 大橋健一(著)
https://amzn.asia/d/48aNzAz
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【大橋健一氏とマスター・オブ・ワイン祝賀会での一枚】
*右は福岡の田中六十五(白糸酒造)田中克典氏*

ワインを知る近道は、土地の特性と典型を徹底的に学ぶこと

ーワインのお仕事をする中で、大切にしている価値観はあるでしょうか。

    僕たちの取り扱っているナチュラル系のワインは、否定派も未だに多いです。昔は、味が変だからという声が多く、実際変なワインも多かったこともあり、味わいをとにかく大切にしています。ナチュラルワインだからおいしくないと言われると一番反発したくなるので、ナチュラルだろうが、コンベンショナルなワインだろうが、おいしいからいいじゃんって言えるような味わいのものをお薦めしていきたいです。

―ワインをもっと学ぼう、知ろうと思ったとき、どんなふうに学ばれますか。

    学び方は、今も昔もあまり変わらないです。味は毎回テイスティングしないといけないのですが、一般の方があの人ワイン詳しいねとか言うときに、よく知識を勘違いされてる方が多いと感じています。例えば、ボルドーに関するワインの名前、銘柄がすらすら言えて、飲んだことある、詳しいみたいに思ってる方が多い印象を受けるのですが、僕は勉強されてる方たちには、それはどうでもいい、銘柄を覚えるなら、その土地と土地の特性と典型を徹底的に学びなさいとスタッフにも言っています。大変ですがその勉強の仕方が一番近道だと思います。

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例えば、シャブリだったらシャルドネを使ってるっていうことがまず大前提としてあります。土壌はキンメリジャン土壌でマロラクティック発酵をしている。シャルドネで、マロラクティック発酵を知っていて北部フランスっぽい酸味を感じる味わいであれば、シャブリではなかろうか?と疑うのは基本的には典型です。そういう典型を各産地で知っておくと、その産地においてそうではない味わいのものを見つけたときに異例として知ることができます。そうすると、その異例をこの生産者は面白いことをやっているな。と認知できるし、伝えることができます。でも、その生産者がどんな方か、または味だけを見ていたら、典型を知らないから、それが面白いことかどうかも判断できません。

    また、他の事例としてボジョレーといえば、マセラシオン・カルボニックが典型です。マセラシオンカルボニックをしている産地は他にあるの?と聞かれときに、なかなかみんな答えられなかったりします。代表はボジョレー地方ですが、マセラシオンカルボニックをするのがメジャーな産地を世界の他の国・生産地域の事例として幾つか知っていれば、他にはこういう産地があるんだよねという話ができます。そうすると、話が世界中に広がってゆきます。

    僕の理想は、ワインに対して国のボーダーラインを外すことです。飲み手も国のボーダーラインから外れる中で、いつまで経ってもブルゴーニュやシャンパーニュの話ばかりしているつまらない世界を早く取り払いたいです。もちろん私個人的にシャンパーニュもブルゴーニュも大好きだし素晴らしいと思っております。ただそんな話ばっかりだとワインの世界が面白くならないと思っています。
例えば、ハイブランド尽くめで身を包み、誰もが高額だと分かる外車に乗って、都内だとでタワマンの上層階に住んでる事こそが、所謂『成功者』だと思っている人ばかり。。。そんなイメージです。ただあくまで嗜好品なので、それが好きな人は好きな人だけやっていれば、もういいんじゃないかと思っている部分があるので、そうではない世界をみんなに楽しんで欲しいと思っています。
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【マコトンさんイチオシのハンガリーのナチュラルワインたち】

http://inuwines1010.shop38.makeshop.jp/view/search?search_keyword=%A5%D9%A5%F3%A5%C4%A5%A7
―それはいつ頃から思われるようになったのでしょうか。

    勉強すればするほど、世界にはいっぱい面白いワイン、おいしいワインがいっぱいあると思っています。でも、僕たちはワインを仕事としてやっているので、仕事柄ブルゴーニュやシャンパーニュの話ばっかりになってしまうこともあります。私たちが扱っているワインはそんなに安いものではないので、どうしても少し富裕層のお客様相手になります。そうすると必ず、シャルドネ、ピノ・ノワールといったお話をされる方が多いです。逆に自分の中では、もうそれお腹一杯!と反骨精神じゃないですが、そんなふうに思うようになってきました。

    もちろん、以前は、ワインに対してボーダーはすごくありました。今では絶対にそんな事言ったりしないですが当時はフランスワインが最高でフランスワイン以外はおいしくない、そんな感覚でした。ワインを知る中で、ボーダーが外れてきました。どこの国にもスター的な生産者がいることも大きいです。オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカにもいいワインがたくさんあります。特に南アフリカは、アパルトヘイト後は世界に出て行って、すごいと思います。最近はドイツも、東欧も面白いんです。ECサイトでも扱っているのですが、東欧のスロバキアのナチュラルワインもオススメです。ドイツは皆さんご存じの方も多いとは思いますが、ハンガリーのトカイみたいな甘口で売ってしまったイメージのものは、辛口のイメージ回帰させるのが大変なようで、現在は若い才能と未来ある生産者たちが素晴らしい辛口のフルミントを生産し奮闘している話も耳にします。

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■I.N.U. wines で取り扱いされているスロバキアのワイン
http://inuwines1010.shop38.makeshop.jp/view/search
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    昔のセオリー、決まり切ったものだけじゃない世界を伝えたいと思っているので、ワインをある程度知ってる人にはこういう話を敢えて提案したりしますし、全く素人の方には、ヒアリングしながらワインをお薦めすることを意識しています。
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変わりゆくワイン市場に向け
─飯田橋のワインバーから始まる新しい挑戦

―これからの展望について教えてください。

    今、アルコール消費量は世界中で減少しています。日本でもおそらく感じていると思うのですが、健康志向の方はお酒を飲まない方がいい、お酒をやめた方が一定数いらっしゃいます。さらに最近ワインの価格がものすごく上がっており、例えばシャンパ―ニュでしたら1万円をきるものはほとんどありません。そうなると、お店でもシャンパンを飲もうとするシーンは以前に比べたら極端に減少傾向にあります。これは極論になってしまうかもしれませんが、例えば普段から居酒屋や和業態でワインを飲んでいた人たちの飲み物の選択肢からワインのカテゴリーが減少もしくは外れていく可能性がに繋がっていくと思います。以上のような状況を鑑みてもワイン業界自体が、減少の一途を辿るしかないという危機感があります。

    そんな中で、今回、新店舗を飯田橋に出したのにも理由があります。ワインバーという、直接お客様に飲んでもらう業態を作ることで、違う販売チャネルに取り組みたいと考えています。例えば、ワインのECサイトで一番売れてるのって何か知っていますか?実は、セット売りなんです。銘柄指定で買うケースは希少なものかブランドがあるもの以外、ほとんどありません。ECで商品を買うのが当たり前の世の中になっている中で、対面接客をストロングポイントにすることが出来ると思っています。もちろんECサイトを活用した販売が、数量や数字は狙えるのですが、対面の方が重要だと感じているので、できるだけお店の人とお客様が直接喋れたりする機会を設けた方がいいと思いました。この仕事自体が非常にニッチな世界なので、対面でやることでしか見出せない価値も存在していると思っております。

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【新しくオープンした飯田橋のワインバーでの1枚】
―東京への出店された経緯について教えていただけますか?

    東京に出店すること自体に興味はありましたが、自分たちの事業拡大のために店舗を増やすという考え方はあまり自分には合っていませんでした。出店には、以前からかわいがっていたアルバイトの女の子の存在が大きかったです。彼女はもともと別の職業が本職でOLをしていたのですが仕事と自身の人生の行く末を悩んでいた中で「出店を考えているから、やってみる?」と話しをする中で始まりました。僕が出資して、店の看板もI.N.U.で運営していますが、実際は彼女が自由に運営するかたちをとっています。営業時間や方針なども彼女が自分で考えて、基本的に私から細かく指示を出すことはほとんどありません。

ー人とのご縁でできたお店だったんですね。

    そうなんです。出店を決めるまでは東京で彼女に直接会ったりもしていなくて、基本はラインでの連絡程度でした。東京には渋谷や目黒など、にぎやかなエリアにもINUのお客様はいますが、あまりにも競争が激しいエリアには出店したくありませんでした。飯田橋は静かで、少し下町の雰囲気も残っていて路地に入っても落ち着いた空気が流れていて、彼女が飯田橋に住んでいることもあり、自然と飯田橋に出店する流れになりました。神楽坂も考えたのですが、雰囲気が少し違うと感じて避けました。自分自身、東京のにぎやかさが少し苦手な部分があるので、飯田橋はちょうど良いと思っています。本当にいろんな縁が重なってできたお店です。

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■I.N.U.飯田橋
東京都千代田区飯田橋4-2-6 アヴァンセ飯田橋 2F
https://tabelog.com/tokyo/A1309/A130905/13302360
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―お話ありがとうございました。最後にラボメンバーにメッセージをお願いいたします。

    ワインを飲むときに可能な限り産地や品種を考えずに選んでみて下さい!
目指すはワインにおける国境なき世界です!!!


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今回の「Honda Lab. SPOT LIGHT」では、稲益誠さんご自身のワインのストーリー・これからの展望、そしてワインの楽しみ方・世界についてたくさんのお話をお伺いさせていただきました。@マコトン さん、貴重なお話をありがとうございました!

今後もHonda Lab.メンバーへのインタビューを実施していきます。お楽しみに!

interview・ Text by     @みぃ